WEB集客やSEOに取り組んでいると、「指名検索(指名キーワード)」という言葉を耳にする機会が増えたのではないでしょうか。指名検索とは、会社名やサービス名そのもので検索されることを指し、ユーザーがすでにあなたのブランドを知っている状態を意味します。近年、Googleのアルゴリズム変動や、ChatGPTなどの生成AIの普及により、特定のキーワードで上位表示を狙う従来のSEOよりも、この「指名検索」をいかに増やすかが、ビジネスの安定性を左右する最重要指標となりつつあります。
しかし、「うちは大企業じゃないから関係ない」「具体的にどうすれば増えるのかイメージが湧かない」と、対策を後回しにしている担当者の方も少なくありません。今回の記事では、指名検索の基礎知識から、なぜ今のSEOやAI検索(LLMO)において重要視されているのか、そして具体的な増やし方までを網羅的に解説します。小手先のテクニックではなく、長く安定して集客し続けるための「ブランド構築」の第一歩としてお役立てください。
- 「指名検索」の言葉の意味や重要性を正しく理解したい方
- 最近SEOの順位が上がりにくく、新しい集客の柱を作りたい方
- AI検索時代に生き残るための「ブランド力」の高め方を知りたい方
- 指名検索とは「ブランド名」での検索。成約率が高く競合がいない最強の流入源。
- AI(ChatGPT等)は「指名される有名な情報」を優先するため、これからのSEOに必須。
- 一朝一夕では増えないが、広告・SNS・広報を掛け合わせることで資産になる。
指名検索とは?一般キーワードとの違い

指名検索(Navigational Queries)とは、ユーザーが特定のサイトやページにたどり着くことを目的として、会社名、サービス名、サイト名、あるいは店舗名などを直接入力して行う検索行動のことです。
例えば、「シャネル」や「ナイキ」などが指名検索に当たります。
当サイトが運営している他のサイト「まちめぐ」「わたしのふるさと」を実際に検索した画面が下記になります。


まずは、SEOでよく使われる「一般キーワード」との違いを整理して、その特異性を理解しましょう。
会社名や商品名で行われる「指名検索」の定義
指名検索は、ユーザーの頭の中にすでに「行きたい場所」や「知りたいブランド」が存在している状態、つまり認知が完了している状態からの検索を指します。
この検索を行うユーザーは、他社との比較検討を終えているか、あるいは最初からあなたの商品を目当てにしている「ファン」や「リピーター」である可能性が極めて高いのが特徴です。そのため、検索ボリューム(数)こそブランドの知名度に依存しますが、その質(成約率など)は一般キーワードとは比べものにならないほど高くなります。
悩みや課題から検索される「一般検索」との違い
一方、一般検索(一般キーワード)とは、「SEO対策 会社」や「ダイエット サプリ おすすめ」のように、ユーザーが抱える悩みやニーズに基づいて入力される検索キーワードです。ユーザーはまだ具体的な解決策や依頼先を決めておらず、情報を探している段階にあります。
従来のSEO対策の多くは、この一般検索でいかに上位表示させ、新規ユーザーを獲得するかに主眼が置かれていました。しかし、競合他社も同じキーワードを狙ってくるため、順位争いは激化しやすく、アルゴリズムの変動によって集客数が大きく上下するリスクを常に抱えています。
【表で解説】検索意図(インテント)の明確さの差
両者の最大の違いは、検索意図(インテント)の明確さにあります。
| 比較項目 | 指名検索 (例: MOPECO) | 一般検索 (例: SEOとは) |
|---|---|---|
| ユーザーの心理 | 「ここに行きたい」「これを知りたい」 (目的地が明確) |
「何かいい方法はないか」「比較したい」 (迷っている状態) |
| 競合性 | ほぼ無し (自社が1位を独占しやすい) |
非常に高い (大手企業やアフィリエイトと競合) |
| コンバージョン率 | 高い (既に興味を持っているため) |
低い〜中程度 (比較離脱される可能性あり) |
このように比較すると、指名検索がいかに「効率的で安全な集客ルート」であるかが分かります。WEBマーケティングにおいては、一般検索で認知を広げ、最終的に指名検索へ落とし込む流れを作ることが理想的なゴールとなります。
なぜ今「指名検索」がSEO対策で重要視されるのか
「指名検索が重要なのは昔からでしょ?」と思われるかもしれません。確かにそうですが、2024年以降、その重要度はかつてないほど高まっている傾向にあります。
その背景には、Googleの評価基準の変化と、生成AI(AI Overviewなど)の台頭という2つの大きな要因があります。
Googleが掲げる「E-E-A-T(信頼性)」への直結
Googleは現在、検索順位を決める上で「E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)」を最重要視しています。中でも「信頼性」や「権威性」を測るシグナルとして、指名検索の数が利用されていると言われています。
多くのユーザーからわざわざ名前で検索されるサイトは、「世の中で認知され、信頼されているブランドである」と判断できるからです。つまり、指名検索が増えれば増えるほど、ドメイン全体の評価(ドメインパワー)が底上げされ、結果として「一般キーワード」の順位も上がりやすくなるという好循環が生まれます。
アルゴリズム変動の影響を受けにくい安定性
SEO担当者を悩ませるのが、定期的に起こるGoogleのコアアップデートです。一般キーワードで1位を取っていても、翌日には圏外に飛ばされることは珍しくありません。
しかし、指名検索はアルゴリズムの影響をほとんど受けません。ユーザーが「あなたのサイト」を指定している以上、Googleはそれを最優先で表示する義務があるからです。指名検索という太いパイプを持っておくことは、Googleの気まぐれに左右されない、盤石な経営基盤を作ることと同義なのです。
生成AI(SGE/LLM)が「有名なもの」を優先しやすい仕組み
そして最も新しい理由が、ChatGPTやSGE(Search Generative Experience)といった生成AI検索への対策です。AIは、WEB上の膨大なテキストデータを学習して回答を生成しますが、その際に「頻繁に言及されている固有名詞(エンティティ)」を重要な情報として認識する傾向があります。
つまり、指名検索されるほど知名度が高いブランドは、AIからも「主要なプレイヤー」として認知され、回答の中で引用・推奨されやすくなるのです。これを専門用語で「LLMO(大規模言語モデル最適化)」や「サイテーション効果」と呼びますが、要するに「AI時代において、無名は罪であり、有名であること自体が最強のSEOになる」ということです。
これからのSEOは、「キーワードをページに埋め込む作業」から、「ブランド(エンティティ)としての認知を広げる活動」へとシフトしています。
「AIに名前を覚えられること」が、最強のSEO対策になるのです。
なお、AI検索対策(LLMO)を専門に行う会社の選び方や、SEO会社との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。自社だけで対策するのが難しいと感じる場合は、合わせて参考にしてください。
指名検索を増やすことで得られる3つのメリット

指名検索が増えることは、単にSEOの順位が安定するだけではありません。ビジネスの収益構造そのものを改善する強力なメリットがあります。
ここでは、サイト運営の視点で見た具体的な3つのメリットを解説します。
コンバージョン率(CVR)が圧倒的に高い
指名検索で流入してくるユーザーは、すでに自社ブランドに興味を持っている「ファン」や「購入意欲の高い見込み客」です。
一般キーワード(例:「SEO会社 おすすめ」)で検索するユーザーはまだ比較検討段階にあり、成約率(CVR)は1%程度に留まることも多いですが、指名キーワード(例:「MOPECO 依頼」)のCVRは、その数倍〜10倍近くに跳ね上がることも珍しくありません。
つまり、大量のアクセスを集めなくても効率よく売上を作ることができる点こそ、指名検索最大のメリットと言えるでしょう。少ない労力で大きな成果を生む、まさに「高燃費」な集客チャネルなのです。
クリック単価(CPC)を抑えて広告費を削減できる
リスティング広告を出稿する場合も、指名キーワードは非常に有利です。他社があなたの会社名で広告を出すことは(商標権のリスク等で)少ないため、競合性が低く、クリック単価(CPC)が安く済みます。
また、指名検索が増えれば、わざわざ高い広告費を払って一般キーワードで集客する必要性が減ります。「まずは広告で認知を広げ、最終的には指名検索(自然検索)で無料で獲得する」という理想的なサイクルを作ることができれば、CPA(獲得単価)を劇的に下げることが可能です。
WEB上の「サイテーション」が増えSEO全体が強くなる
指名検索が増える過程では、SNSやブログなどで「〇〇(会社名)のサービスが良かった」といった口コミ(サイテーション)も同時に増えているはずです。
Googleや生成AIは、リンクが貼られていなくても、WEB上に存在する「ブランド名の言及数」を評価対象としています。指名検索が増える取り組みをすることは、結果としてサイト全体のドメインパワーを高め、狙っている一般キーワードの順位をも押し上げる「底上げ効果」をもたらします。
指名検索数を増やすための効果的な方法・施策
指名検索の重要性は理解できても、「じゃあ明日から増やそう」といって簡単に増えるものではありません。指名検索とは「認知」と「信頼」の総量だからです。
ここでは、WEBとリアルを組み合わせた具体的な施策を紹介します。
WEB広告(ディスプレイ・動画)による認知拡大
まだブランドを知らない層にリーチするには、検索連動型広告(リスティング)ではなく、受動的に目に入る「ディスプレイ広告(バナー)」や「YouTube動画広告」が有効です。
ただし、ここで意識すべきはクリック率ではありません。「名前を覚えてもらうこと」こそが最大の目的です。キャッチーなロゴやフレーズを繰り返し表示させ、「あ、このロゴ見たことある」という刷り込み(単純接触効果)を行うことで、未来の指名検索の種をまくのです。
認知目的のディスプレイ広告は、直接のコンバージョン(CPA)が悪くなりがちです。
しかし、そこで停止してはいけません。「広告を見た人が、後で指名検索してくれたか」を見るために、広告配信期間中の「指名検索数の推移」を効果測定の指標にしてください。
SNS(X・Instagram)での「UGC(口コミ)」誘発施策
個人がメディア化している現在、企業からの発信以上に強力なのが、ユーザーによる口コミ(UGC:User Generated Content)です。
X(旧Twitter)で「役に立った!」とリポストされたり、Instagramで商品写真が投稿されたりすることは、指名検索の直接的なトリガーになります。「〇〇さんが紹介していた商品」として検索される機会を増やすために、ハッシュタグキャンペーンを行ったり、思わずシェアしたくなるような「共感型のコンテンツ」を発信したりすることが重要です。
- 公式アカウントで、自社について言及しているユーザーを積極的に「いいね・リポスト」する(承認欲求を満たす)。
- 「#〇〇使ってみた」など、投稿しやすい独自のハッシュタグを用意する。
- 引用リポストで感想をくれたユーザーに、丁寧に返信する。
プレスリリースとメディア露出による「権威性」の獲得
口コミが「横の広がり」なら、メディア露出は「縦の信頼」を作ります。新サービスや調査データを発表する際は、必ず「プレスリリース」を配信しましょう。
大手ニュースサイトや業界メディアに転載されると、多くの人の目に触れるだけでなく、GoogleやAIに対して「このブランドは社会的に信頼されている(権威性がある)」という強力なシグナルを送ることができます。メディアで名前を見たユーザーが、気になって検索窓に名前を打ち込む「メディア指名」の流れを作るのが理想です。
一次情報の発信による「専門家」としてのブランディング
「〇〇といえば、この会社」という第一想起を獲得するためには、独自性の高いコンテンツ発信が不可欠です。
他社のまとめ記事を焼き直したものではなく、自社の独自調査データ、開発裏話、あるいは社員の顔が見えるコラムなど、一次情報にこだわりましょう。AIは「どこにでもある情報」を無視し、「そこでしか語られていない体験談」を好む傾向にあります。「この記事を書いている〇〇さんの意見が聞きたい」とユーザーに思わせることができれば、それは立派な指名検索の動機になります。
オフライン施策(チラシ・展示会)との連動
WEBマーケティングだからといって、WEBだけで完結させる必要はありません。展示会での名刺交換、店舗でのチラシ配布、セミナー開催など、リアルな接点も指名検索の重要な入り口です。
紙媒体や名刺には、URLやQRコードだけでなく「〇〇で検索」という検索窓のデザインを大きく掲載しましょう。スマホですぐに検索してもらう癖をつけることで、Googleに「特定の地域やタイミングで急激に指名検索が増えた」というデータを認識させることができます。これを「サイテーションの山を作る」と言い、SEOに好影響を与えることが知られています。
自社の指名検索数はどう調べる?確認方法とKPI設定

指名検索を増やす施策を行っても、効果が出ているかを測定できなければ意味がありません。
ここでは、無料で使えるGoogle公式ツールを用いた確認方法と、目指すべき指標(KPI)について解説します。
Google Search Consoleでのクエリ確認手順
最も確実な方法は「Google Search Console(サーチコンソール)」を使うことです。
- サーチコンソールにログインし、「検索パフォーマンス」を開く。
- 「クエリ」タブを選択し、フィルタ機能で「次を含むクエリ」→「自社名(またはサービス名)」を入力。
- 表示されたクエリの「クリック数」と「表示回数」の合計を確認する。
ここに表示された数字が、あなたのサイトに「指名で訪れた」ユーザーの実績値です。この数字を月次で記録し、施策前後で右肩上がりになっているか定点観測してみてください。地道な活動が数字として表れた瞬間、ブランドが育っている実感が湧いてくるはずです。
「MOPECO」単体だけでなく、「MOPECO 評判」「MOPECO 料金」といった複合キーワード(サジェスト)も指名検索の一部です。
これらが増えているということは、ユーザーの検討度合いがより深まっている証拠です。
Googleトレンドやプランナーを用いた市場ボリュームの把握
「そもそも世の中でどれくらい話題になっているか」を知るには、「Googleトレンド」が有効です。自社名を入力すれば、検索需要の推移がグラフで可視化されます。競合他社名と比較することで、現在のブランドシェア(知名度の差)を客観的に把握することも可能です。
また、これからリスティング広告を出稿する場合は「キーワードプランナー」を使って、指名キーワードの月間推定検索ボリュームを確認し、潜在的なファンの母数を把握しておくと良いでしょう。
【小話】「ググる」から「タグる」、そして「指名する」へ

かつて、私たちは分からないことがあるとすぐにGoogle検索窓に言葉を打ち込みました(ググる)。その後、SNSの普及により、ハッシュタグを辿ってリアルな口コミを探す行動(タグる)が若者を中心に広がりました。
しかし今、AI時代の到来により、検索行動はさらなる進化を遂げようとしています。
情報爆発時代にユーザーが選ぶ「確かな情報源」
ネット上には情報が爆発的に増え、フェイクニュースや低品質な「こたつ記事」が溢れかえっています。その結果、ユーザーは「何を調べるか」よりも「誰が言っているか」を重視するようになりました。
「この人の言うことなら信じられる」「この会社のサービスなら間違いない」。そうした確かな信頼(ブランド)に基づいた「指名検索」こそが、情報の迷路から抜け出す唯一の鍵となります。これからの時代、検索窓に入力されるのは「キーワード」ではなく「信頼できるパートナーの名前」になっていくでしょう。
AIに「お気に入り(推奨)」として記憶される未来
そして、この変化は人間だけでなく、AIにも起こっています。AIもまた、WEB上の膨大なデータの中から、多くの人間に指名され、信頼されている情報源を学習します。
指名検索を増やすということは、AIに対して「私は信頼に値する存在です」と教え込むことと同義です。ユーザーから指名され、AIからも「お気に入り」として推奨される。この2つの「指名」を獲得したブランドだけが、次世代のWEBマーケティングを制することができるのです。
まとめ|指名検索は一朝一夕では増えないが最強の資産になる
今回は、AI時代に不可欠な「指名検索」の重要性と、具体的な増やし方について解説しました。
指名検索を増やすことは、今日やって明日結果が出るような簡単な施策ではありません。日々の誠実な情報発信、顧客対応、そして認知拡大への地道な投資が必要です。しかし、そうして積み上げた「ブランド」という資産は、Googleのアルゴリズム変動にも、AIの仕様変更にも、競合の参入にも揺らぐことはありません。
「順位を追うSEO」から「指名を増やすSEO」へ。視点を切り替え、ユーザーとAIの両方から愛される、替えの利かないブランド(指名される存在)を目指していきましょう。